バーデン・バーデンの話 その2/

この町はドイツでも有数の保養地であり、51℃から66℃の温泉が一日あたり80万リットルの温泉が
湧き出ており、ゲルマン人が移動する前にはローマ人がこの温泉を利用した時の遺跡が残されている。

日本人観光客も訪れるのだが、中には宿泊するだけで、温泉に入らずにどこかに移動する団体もいる。
草津温泉に行って温泉に入らずに去っていくようなものだ。もったいない。



バーデンバーデン、カラカラ浴場


このドイツではに健康保険で温泉治療が受けられる制度があることもあり、結構お年寄りが多い。
この制度については良く知らないのであるが、カラカラ浴場に行くと、時々お年寄り達がインストラクターの
指示に従ってプール内で運動をしているのを見かけることがある。

このカラカラ浴場はいわゆるエステがあるが、関係ない私には何をするのか、どういう効果があるのか
さっぱり分からない。
一般的には、温水プールの方で皆さん満足しているようである。
以前はバスタオルを貸してくれたのだが、それもなくなってしまい、そばにある売店で購入しなければならない。

この中には大きな温水プールが三つほどあり、ジャグジーあり、流れるプールあり、そして、吸入治療などの
部屋も置いている。

もうひとつはその隣にあるフリードリッヒ浴場で、こちらはプールではなく、完全にお風呂で、一糸まとわぬ姿で
入浴することになる。
日によっては混浴となり、その日には男湯と女湯を隔てているすりガラス製のドアが解放され、行き来が自由になる。

この日には男湯の最大の浴槽が女性にも開放されることになる。
中ではマッサージ付きとマッサージなし、のコースがあるが、料金は高くなってもマッサージ付きのほうを選ぶ。

最初にシャワーを浴び、乾燥した二ヶ所の熱風風呂を通過し、マッサージをしてもらう。
この時、当然ではあるが、女湯では女性のマッサージ師が付くそうだ。このマッサージであるが、石けんを身体に塗り、
なんとタワシでゴシゴシこすってくれる。 特に痛くはない。

その後に力を入れてマッサージをしてくれる。いやその気持のいいこと!
それが終ったら二つの蒸気風呂と、三種類の温度の違った浴槽にあちこち交代で入りながら、最後には18℃の
水風呂を浴び、身体を拭いた後に休憩室に行き、蓑虫のように毛布に包まって休憩する。

所用時間2.5〜3時間。終った後は、グタ〜ッとなり、「もう、矢でも鉄砲でも持って来い!」という気分になる。

是非ともお勧めしたい。

タオルで前を隠すようなことは絶対してはいけないし、そういう物は持ちこめない。
第一、そんなことをしていると変な目で見られる。

かなり前のことであるが、60才過ぎのご夫婦がこの町に3泊したことがある。
最初は混浴ではなかった。
ご夫婦とも非常に喜んで、翌日も行きたい。という話ではあったが、混浴の日だった。
「みんなで行きましょうよ」、とご主人。
「いいや、もういいです」、と私。

奥様は黙ってうつむいていらした。「いいじゃないですか!一緒に行きましょうよ」。
「いいや、女性はいくつになっても、自分の旦那様とお医者さん以外の知り合いに裸を見られるのはいやでしょうから、
やめときます」。
奥様はコックリうなずいていらした。結局お二人は、中では会わなかったらしいのだが。

ある時、ハイデルベルクからのオプショナルツアーで男女十二名ほど、合計二十四名でこの町に行ったのだが、
混浴の日であった。

男性は全てフリードリッヒ浴場、女性は水着使用のカラカラ浴場に行ったのは言うまでもない。

聞いた話であるが、ある中年女性の団体が混浴の日に大挙押しかけ、こちらの男性の裸を見て大騒ぎになり、
係りの人に「出て行きなさい!さもなくば警察を呼びますよ」、と言われ、町の顰蹙を買ったことがあるそうな。

この中では若くてきれいな女性、カッコ良くてたくましい男性が入って来ても、じろじろ見てはいけない。
何となく微笑みながら明後日の方向を見るような感じで、見ていないようなふりをしなければならないのです。