プラハの話 その2

これも初めてプラハに行った時の話であるが、当時は外貨を稼ぐ為に西側からの外国人旅行者には割高の
レートで両替をしてくれた。

ドイツマルクは公表レートが3クローネだが、銀行では75%増しで両替してくれたように記憶している。
それでも両替率は相場よりもずっと悪かった。
この国では闇両替が半ば公然と行なわれており、町の中で西側からの外国人とわかると、両替してくれ、
と声をかけてくる人達が後を断たなかった。

聞けば、1ドイツマルクは10クローネだと言う。悪くはないのだが、偽札をつかまされたり、
トリックを使ってごまかされたりする恐れがあるので一応は警戒する。

様子を見ていると、20才前の若い男がまず道行く人に声をかけて、オーケーとなったら、
実際に金を持っている人が近づいて来て両替をする、というやり方らしい。大体はこの声を
かけてくる男はジプシーらしかった。

ヴァツラフ広場前の国立博物館の中にあるカフェのウエイターが両替をしてくれるよう、
外国人観光客に誰彼かまわず持ちかけているのには驚いた。黙って聞いていると、
あれこれ外貨があると助かる、と自分の事情を話し、両替をいいレートでしてあげますから…。
と話している。

大抵は10マルク札を出して100クローネ札と両替している。

本来の仕事をするよりは、この両替が本業のように熱心に話しかけている。
私にもそれが回って来た。
マルク、ドルを問わず、とにかく外貨があれば、西側の品質のよい電化製品、カセットテープ、化粧品、
ストッキングなどが買える、とあって両替をするだけでもいい商売になるようだ。
しかしこれほど大っぴらにやるとは…。

東ドイツでは人に隠れてやることはあるが、ここでは白昼堂々と行なわれている。

闇両替して実際にお金はたっぷりあったとしてもそれほど買うものもなく、結局はおいしい料理を食べて、
ある程度いいホテルに泊まるぐらいのことしかできず、余ってしまうこともあるようだが、
再両替は銀行ではおいそれとはしてくれない。
銀行で両替をした時の確認書の控えを提示せねばならず、当然ではあるが、それ以上の金額は
再両替をしてくれないのである。

というわけで結構贅沢をせねばならなかったり、余計なものまで買わねばならないことになったりする。
私のように貧乏旅行をしている人にとってはおいしいものが食えるのでいいことではあったが。

ある時、公園のベンチに座って休んでいると、「両替してくれ」、と闇両替商が近づいて来た。
私は、。「10ホンコンドル札だったらあるよ」、と見せる。
「アメリカドルでいくらか?」。「知らない」、ととぼけると、「200クローネと交換してくれ」と頼んできた。
「いいよ。じゃ、これ」。
両替してからすぐにその場を遠ざかる。何しろ実際の相場の4倍で替えて、こっちはかなり儲かったわけなので。

ある小さな町を歩いていた時、10才にもならないと思われる子供が私を見て、「マルコ、マルコ」と
声をかけてきたのにはさすがに驚いた。