ローテンブルクの話 その3

ローテンブルクには中世のかっこうをした夜警さんがいる。

シーズンになると夜の8時にしかけ時計の前で黒いマントを着て、槍と手下げランプを持って
立っているのだが、8時のしかけ時計が終った後に、この人がローテンブルクの町を1時間ほど案内してくれる。

時によっては英語で案内してくれるようだが、自分自身はついて行ったことはないので料金はいくらか分らない。

実はこの夜警さんは二代目で、先代はかなりの年を取ったオジさんだった。

夜の9時のしかけ時計の後に、大きな声で、「皆さんにお知らせ致します。時計が9時を打ちました。
神のご加護を」と歌い出し、集まった人たちに向かい、「皆様に町をご案内致します。一人当りの料金は2マルクです。
まだお財布は出さなくて結構です。料金は終ってから頂きますので。きのうご一緒にいらした方はどうぞご心配なく。
今日は別な所をご案内致します。」お客様はぞろぞろとついて行く。

一度説明をし始めると、20分以上立ったまま説明を聞いているので、日本人には飽きてくるし、疲れてくる。
こういう場合、日本人はしゃがんでしまうのだが、こちらの人たちは割と平気らしい。

皆熱心にオジさんの話に聞き入っている。一緒について行った人たちも大体最後まで話しを聞き、最後にオジさんの帽子に
2マルクを入れる。

わたしは5マルクを入れたことがあったが、ガイドだと分って後は無料で聞かせてもらった。

この夜警のオジさんはローテンブルクでもかなり有名らしく、とはいっても人口がたったの一万二千人の町だから、
ちょっとしたことでも有名人になってしまうのだろうが。

それはそれとして、いろいろガイドブックにも載っていないことを詳しく、そして冗談も交えながらあちこち
案内してくれたり、一度などは地元の人しか行かない取っておきの居酒屋で一緒にワインを飲みながら
あれこれ話したことがある。

なんでもこのオジさんはこの町にある有名な中世犯罪博物館の創立者だそうな。
この中の展示物を集めるのにかなり尽力したらしい。

私も何度かお客様をご案内したことがあったが、拷問器具だとか、斬首刀はもちろん、手かせ足かせ、
貞操帯まで展示してあり、日本語の解説もある。

お客様の中には気持悪い、と言って出てしまう人もいる。無理もない。あまり気持のいいものではない。
まあ興味のある人だけにお勧めするようにしている。

ところで、このオジさんは日本のテレビ番組、大橋巨泉の「世界丸ごとハウマッチ」に出たこともある。
「はい、このローテンブルクの町をご案内してくれる夜回りさん、お客様ひとりからいくら集めるのでしょう?せえの、
ハウマッチ!!」とやったそうだ。