ワインの話 その1

ドイツと言えば、ビールの話になるのは当然ではあるとしても、ワインもなかなかいけるのです。

ドイツワインの主流は白なのだが、赤ワインもあり、それも決してフランスやイタリアの赤ワインに
負けないものが結構ある(この話は後日)。

ドイツには旧西ドイツ11ヶ所、旧東ドイツに2ヶ所、合計13ヶ所のワイン産地があり、
特に有名なのが、ラインガウ、モーゼル・ザール・ルーヴァー、ラインヘッセン、フランケン、
といった所だろうか。

旧東ドイツには陶器で有名なマイセン周辺で作られるワインがある。ここはワイン北限と言われており、
あまり知られておらず、私自身もほとんど飲んだことはないのだが、辛口が多いようだ。

ドイツワインは等級がかなりはっきりしており、最も等級の低いターフェルワインと呼ばれる
テーブルワインがあるが、中辛口、あるいは辛口がほとんどで、味わうよりは量をこなす人向き用で、
ほとんどお店ではみかけることがない。
その上が、クワリテートワイン・ベシュティムター・アンバウゲビート(QbA)、
そしてクワリテートワイン・ミット・プレディカート(QmP肩書き付高級ワイン)となっている。

QbAとQmPに対しては検査が行なわれており、この検査番号が必ずラベルに記載されている。

1985年に日本でも騒がれたのだが、普通のワインに不凍液ジエチレングリコールを混入し、
貴腐ワインと偽って販売されたことがあった。

貴腐ワイン独自の甘味を出す為に、グリセリンを混入するとこの検査に引っかかったのだが、
ジエチレングリコールだと検査に引っかからない、ということでやらかしたそうである。

聞いた所では、この事件を起こした会社はドイツ最大のワイン輸出業者で、独自のワイン畑も所有しており、
かなり有名な会社なのだが、この不正を発見したのは税務署だったそうな。

税務監査で、この会社の不凍液の購入量が不当に多い(しゃれたつもり)ので調査した結果、この不正が暴かれた、
ということである。

没収されたワインがなんと6千万リットルと聞いたが、処分に困り、結局はアルコールと不凍液が入っている、
と言うので、冬に除雪用に道路に散布したそうだ。効果覿面ではあったが、運転手は皆酔払い運転していた(うそです)。

この不凍液、自分の車の冷却液を見てみたのだが、きれいな琥珀色で、正に貴腐ワインの色をしており、
舐めてみたら確かに甘い味がした。最近の不凍液は琥珀色をしていないのだが、この事件が原因なのだろうか?

それはそれとして、このQmPのワインは何種類かに分けられており、等級が上がるほど甘味が増して行く様に
なっていて、エクスレ(糖度)によって分かれている。

カビネット:あっさりとしてちょっと甘さを抑えた感じの、食事に合うワイン。
      糖度80‐90
シュペートレーゼ:遅摘みのワインで、葡萄を完熟させて甘さを増したワイン。
         糖度90‐100
アウスレーゼ:房選りのワイン。完熟した房のみを選んだワイン。かなり甘口で
       食事に合うのはここまで。糖度100‐120
ベーレンアウスレーゼ:完熟した粒だけを摘み取って作ったワインでデザート用。
           糖度120‐150
トロッケンベーレンアウスレーゼ:干葡萄の粒選り。貴腐菌が付着し、干葡萄状態にな
                った葡萄を使用して作ったワイン。糖度150以上
アイスワイン:冬の時期の夜明け前、零下8℃以下で氷結した状態で収穫した葡萄を使
       用して作ったワイン。
と、このように区別されている。

特にアイスワインは冬になっても零下8℃以下にならなかった場合はその年の葡萄が無駄になってしまうので、
リスクが伴い、作る農家は少ないようだ。ただし、ある国では収穫した葡萄を冷凍庫に入れて凍らせてアイスワインを
作る事が許されている。これだったらいくらでも、しかも安く作ることが出来るので、そのうちにかなり安く
出回る事になるだろう。

1979年、一本8、000円のアウスレーゼを東京のデパートで買い求め、秋田で小さな酒屋をしている
実家にお土産にした。秋田の田舎ではこのようないいワインは手に入らないのである。

少しずつしか飲めなかったのだが、皆で「いやー、うまいなー。これだったら8、000円しょうがないな。」
と納得しながら味わったのだった。ところが、1980年にドイツに渡り、同じワインをスーパーマーケットで発見。
値段を見たら何とたったの10マルク(800円)だった!! 「クニャロ!!」

最近は外国のワインが安くなって来ているようだが、私に言わせればまだまだ高い。
カビネットが1,000円、甘口のおいしいアウスレーゼが2,500円ぐらいになってくると消費量も
かなり増えるのではないか、と思う。

よく友人に頼まれて送ってあげているが、郵便代が高く、ワイン代よりも高くなることがある。それでも日本の価格よりも
安いと聞いている。