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バイロイトの話 その1

初めてバイロイトに行ったのは1974年7月の中旬だった。

まだ学生の時期で、その当時珍しかった個人旅行である。

往復の航空券、スチューデントレールパス、そしてユースホステルの会員証を持っての
個人旅行、貧乏旅行である。

目的は当然ワーグナーの作ったバイロイト祝祭歌劇場を見学することである。

駅に着いて荷物を預けてからユースホステルに電話して予約を頼むと、今日の16時に来なさい、と言われる。


バイロイト祝祭歌劇場

暑くなくすがすがしい朝だった。

駅から歌劇場まで2‐3キロはあっただろうか?

結構な距離だが、そこまで一本道だし、バスで行くとか全く考えてなかったので歩くことにする。

途中で60才ぐらいの女性を追い抜こうとしたら、声をかけられた。「ねえ若いお方。貴方も祝祭劇場に行くの?」
「ええそうです。中に入って見学したいんですが、できるでしょうか?」
「そうなの。私の娘がコーラスで歌っているのよ。一緒に行きましょうね。」、というわけで一緒になる。

道すがら色々話した(と思う)のだが、まだほとんどドイツ語ができなかったので、何を話したかは全く覚えていない。
劇場に着いてからこのご婦人がリハーサルを見学できるように交渉し、私の為に許可証をもらってくれた。

許可証にはワルキューレの第1幕と第3幕と書いてあった。

このリハーサルは一般公開、というほどではないにしろ、結構見学者の為に便宜を図っているようだった。

待っている間、何となく興奮してロビーの床を掃除しているお姉さんもとても美人に見える。

しばらく待たされて客席に入った所、目に入ったのはクッションの付いていない硬い板製の椅子だった。

この硬い椅子に座って何時間もオペラを聞くなんて大変だろうな、と思う。

そしてオーケストラが全く見えないオーケストラピット。つまり、観客はあくまでの舞台のみに注目でき、
オーケストラが観客の目障りにならないようになっていた。

逆に指揮者やオーケストラを見たい人には残念だが。

リハーサルが始まり、舞台では二人の歌手が大声を張り上げて歌っていたが、ドイツ語ができないせいもあり、
さっぱり意味がわからない。ただただ、その雰囲気、迫力に圧倒され、頭の中が空っぽになっているところを
音楽が過ぎ去って行った。

2時間ほど見学したろうか。

何がなんだかわからないままリハーサル終了後、オーケストラピットの中に入って行くと、
オーボエ奏者がいたのでちょっと話をしながら吹かせてもらう。

「もう終りだから静かに!」
という声がした。

指揮者のホルスト・シュタイン氏だった。

というわけでワーグナーの殿堂での体験に関して、オペラそのものはぼんやりとした幻想のようにしか記憶がないのです。








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