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ヴェニスの話 その2
ヴェニスのお土産といえば、何と言ってもヴェネチアングラスだろう。町を歩くとどこに
でもお店があり、
きれいなグラスが並んでいる。
グラスの工場はヴェネチアにあるわけではなくて、隣のムラノという島に集中している。
これはガラス加工には火を使うので、火事になったら大変だという理由と、製造法を盗まれない
ようにという理由だそうだが、実際は後者の理由によるものらしい。
88年に両親とこの町を訪れた際、母が、「弟にヴェネチアングラスを買ってくるように頼まれた」
ということで、買いに行くことにした。ホテルにはガラス工場見学もできる、というパンフレットが
置いてあり、ホテルで申し込むと、無料で水上タクシーが迎えに来てくれる親切さである。
高速タクシーに乗って15分ぐらい行くとムラノ島に到着、工場のすぐ前で降ろしてくれる。
案内係は英語、ドイツ語を話し、工員たちがシャンデリアの部品を作っているところを簡単に説明して
くれた後で、販売室に案内される。ところが、どこにもグラスは展示していない。
販売員がおもむろにカウンターの下から1個のきれいなグラスを取り出して見せてくれた。
「いくら?」「一個3万円です」「結構高いなー」、「いいや、せっかくですから、
これぐらいの物を買って頂きたいのですが」「そりゃいい物ではあるだろうけども、それにしても高いなー。
もっと安いのはないの?」と聞くと、別のグラスをカウンターの下から出してくれた。
「なんだ。ちゃんとあるじゃないか」と思う。< br>
結局、あれこれ選ぶことをさせずに、一番高いものを売りつけようという魂胆である。
こちらは5千円ほどである。
「まあ、これだったら悪くないな」ということで5個購入し、日本まで発送してもらうことにする。
これで買い物は終わりと思いきや、販売員が、「お〜〜、ちょっと、ちょっと待って!これプレゼント!」
と言いながら先程の高いグラスを差し出した。
「ああ、そう。どうもありがとう」と手を出すと、「いいや、安くしときますよ、という意味です」と言う。
急に母が興味を出し始めたが、そこへ父の一言。
「もういいじゃないか」で、結局それで買い物は終わり。
行きはタクシーであったが、「売ってしまったから、もう用はない」とばかし、帰りは販売員から水上バスのチケット
をもらっただけであった。
その発送してもらうはずのグラスだが、3ヶ月経った11月になっても両親の元に届かず、
私が領収書のコピーを添えて手紙を書いたところ2週間後に届けられた。
これがイタリア人のやり方なんだなと思ったが、これで商売になっているんだから、ある意味ではうらやましいと思う。