フランクフルトの話 その3


この町があまり治安の良くない町だということはすでに書いたのだが、こういうことがあった。

中央駅のすぐそばにあるホテルのロビーのソファに座ってお客様を待っていたら、結構高級そうなスーツを着た
二人のアフリカ人が声をかけてきた。

「自分たちはアフリカの民芸品を輸入販売しており、中国人とビジネスのアポイントメントがあったのですが、
あなたですか?」「いいえ、私は日本人ですよ」と応えたが、それにはかまわず、その工芸品の写真をあれこれ
見せているうち、細長い懐中電灯のような物を出した。

こちらは何のことかさっぱり分らずにいると、さらに白い紙を出し、この懐中電灯の光にかざし始めた。

この白い紙はちょうど100マルク札の大きさで、なんと、偽札を作るための紙だったのである。
この紙を使って100マルク札をカラーコピーすると、検札機に引っかからない偽札ができるというわけである。

この二人、民芸品というのはカモフラージュで、こちらの紙を売るのが本業らしい。

目を丸くしてあきれていると、口に人差し指を当てている。
要するに、「誰にも言わないでいてくれ」、というサインである。
「オーケー、オーケー」と言っておく。

この二人、さらには「名刺をくれ」とまで言い出した。
そんなことをして、偽札作りの片棒を担ぐわけにはいかないし、下手をすると悪用されたり、「偽札一味の
片割れだと警察に密告するぞ!」と恐喝されかねない。
はっきり、「ノー!」と言っておく。

結局この二人、あきらめて去って行った。
なんともはや、こんな商売がはびこっているとは思ってもみないことである。

どこかしらに大きな組織があり、このようなアフリカとか、アラビア、バルカン諸国からの難民を使って不浄の金を
稼いでいるのだろう。

そういえば、この町には、いわゆるショバ代、こちらではガード料という名目で金をせびり取るマフィアがいるそうである。

どこにもこういう商売はあるものらしい。
日本ではその筋の人間はすぐに見分けが付くのだが、こちらでは誰がやっているのかさっぱり判らないし、
その頭目が人前に出てくるのは滅多にない様だ。

いずれにしろ、金があるところには人が集まってくるのは万国共通らしい。