くるみ割り人形の生まれ故郷ザイフェンの観光案内を
日本人ガイドが専用車でご案内します。



ザイフェンの話

ザクセン州の州都ドレスデンから南西のエルツ山地地方、マイセンの陶器が発明されるまで、
ザクセン選帝侯に巨大な富をもたらした銀鉱山で栄えたフライベルクを過ぎてさらに行くと、
チェコの国境のそばにザイフェンという人口3千人ぐらいの小さな村があり、この町周辺がくるみ割り人形などの
発祥の地と聞いている。

その昔、この地方には錫の鉱山があり、男たちは鉱山の坑道の中に潜って働いていたが、女性たちは
貧しい家計の足しにするべく、山に囲まれた地元に豊富にある木材を原料として、内職という形で人形を
作り始めたと聞いている。

その後、19世紀になって錫の採掘は鉱石が枯渇したり、採算が合わなくなったりして廃坑となってしまったのだが、
鉱石を砕く為の水車を利用して木工旋盤を回し、くるみ割り人形、パイプ人形、ろうそくの熱で回転するピラミッドと
呼ばれる置物などを本格的に製作し始め、それがこの地方の重要な産業となった。

結局は、日本の鳴子のこけしの様な物だろう。雪深く貧しい地方で、豊富にある木材を利用して内職という形で
始まったわけである。

スイスの時計も似たような環境だったらしい。材料をあまり必要としない、冬が長くて貧しい人たちの仕事である。

それはそれとして、このザイフェンという町は、日本人で知っている人はほとんどいなかったったはずであるが、
ベルリンの壁が開いてから数年後にガイドブックにも載る様になり、しかも最近は、「ウルルン〜」という
テレビ番組にも出たと聞いている。

日本人の情報網の広さ緻密さには驚くばかりである。一体どこからこのような情報を仕入れて来るんだろう?

私が初めてこの町を訪れたのは、ドイツの個人ガイドを始めてからしばらくたってからである。
壁が開く前にドレスデンに住み、その当時にコネと外貨でザイフェンの手工芸品を収集していた
Fさんの紹介で、日本で個人的に人形博物館を開いている方がおり、Fさんと、その館長を
ザイフェンまでお連れすることになったのである。

Fさんはこの町の人たちとかなり親しく、あちこちの作業場を訪問したが、どこでも歓迎された。

ここには小は家族だけ、大は従業員を数十人抱えている多くの作業場があったが、小さな作業場では、
くるみ割り人形なら、くるみ割り人形だけを製作するといった感じだった。

東ドイツ時代は、この町で作られた製品はほとんどが国家によって買い取られ、外貨を稼ぐぐために輸出用に回されたらしい。

私が東ドイツに住んでいた時、市中の店には全く見られれなかったし、製作者のコネで横流しをしてもらうしかなかった。

私も東ドイツに住んでいた時、製作者にコネがあるFさんから、ピラミッドを一個譲ってもらったことがある。

いくつかの作業場を訪問した後、この町にある数少ないホテルに宿を取り、夜になってからFさんの提唱で
町の製作者を集めて懇談会を行なった。

その中で製作者の一人が、「我々の製品を真似た安い中国製のコピーが出回っており、非常に迷惑している」と訴えた。

これに関しては私も気がついていた。ローテンブルクや、ディンケルスビュールのお土産店、そしてクリスマスが近づくと、
スーパーマーケットなどに中国製の粗悪品が非常に安い値段で並ぶのである。

何となくそれらしい格好をしてい るのだが、良く見ると、材料の品質、加工、色づけなどがかなり悪い。

羽根の付いているピラミッドにいたっては、プロペラが止まってしまい、火事になる恐れがあるものもある。

こんな偽物を売られた方はたまったものではない。
本物の評判まで落とすことになりかねない。

同行した博物館館長は懸念する彼らに、「心配ありません。これがオリジナルで、本物だということをアピールすればいいのです。
ただし、これから先は、それなりの企業努力が必要となります」と応えたのだった。

それから10年ほど経った2004年の3月に、この町を再訪した。宿泊施設、レストランも何軒かあり、町並みは
きれいになっていて、名産物を売るお店がかなり増えた。産地直売である。

西のお土産店で買うよりは、2〜3割は安い。

相互協力という形で、自分で制作したものはもちろん、他の製作者の製品も置いてある。加えて、工場であった建物が
ホテルになったり、作業場にカフェ、レストランを隣接したり、見学する人から入場料を徴収したりと、それなりに
企業努力をしているようである。

その中には廃業を強いられた作業場もあることだろう。

統制経済から自由経済に移行したのであるから、ある程度は仕方がないのだが。

町には生産者組合が所有している見学者用の作業場があり、ここでは、木工旋盤を使って動物の型を削り取る作業から、
小さなのみを使って樅の木の様に削る作業、彫刻刀を使って動物を削る手作業などを見せてくれる。

作業している職人に、「安い中国製の物が出回っているけれども、酷い影響がありましたか?」、と訊ねた。

「ええ。ある程度はね。でも、本当に好きな人はそんな物は買わないんですよ。本物を欲しがりますから」と応えてくれた。

町の中心には大きな郷土博物館があり、ザイフェンの町と、その産業の推移を知ることができる様になっている。

毎年クリスマスマーケットが出る11月末から12月22日ごろまでは、この交通の不便な国境の小さな町に、
日本を始め、全世界からの観光客がやって来て、かなり賑やかになることだろう。
この地方の伝統的産業が廃れなければいいのだが・・・・。

警告!!!!
ドイツのくるみ割り人形、パイプ人形、ピラミッドなどのお土産を買う際には、中国製がかなり出回っているので注意されたし。

最近はかなり品質も良くなってきてはいるのだが、やっぱり本物を買って行って欲しいのです。

見分け方は簡単。人形の足の土台の裏に「ERZGEBIRGE(エルツ山地)」というシール、あるいはスタンプが
押してあるのは本物です。
偽物は極端に安いし、作りが雑で、塗料を透かして木目が見えていたり、木材の削りが荒い物が多くなります。

ぜひとも本物を買ってください。













ドイツの個人旅行案内、リムジンサービス・ハイヤー藤島
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