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アムステルダムの話
1270年、現在はアイセルゼーとなった、当時のアイセル湾に流れ出るアムステル川の
河口にダムを建設したのがアムステルダムの名前の由来らしい。
この町はヴェニスと同じ様に湿地帯が多く、まず樅の木などの杭を打ち込んで地盤を安定させ、
その上に建物を建てたのだが、この木材はドイツのシュヴァルツヴァルト地方から筏流しで
運ばれて来たとのこと。
町並みを気をつけてみてみると、ちょっと傾いている建物もある。
また、東京駅のモデルとなったと言われるこの町の中央駅から放射線状に道が出ているが、
それに沿って縦横に運河(GRACHT)が張り巡らされていて、その両側に16〜17世紀に立てられた
間口の狭い家がずらっと並んでいる。
これは運河に面している土地が高く、そのために間口が狭くて奥行きが深い建物になってしまったのである。
そしてその切妻は、その時代の流行、持ち主の趣味などによって色々異なって作られている。
中に入ると、例外なく狭い階段があり、屋根の下には引越しの時などに荷物を出し入れするための釣瓶が
軒先に出ている。これはその昔、この町の大商人が船荷を上げ下げするために用いたものだが、
今でも立派に利用されているわけである。
この間口が狭くて、奥行きが深いという建物を利用してナチスの手から逃れるために隠れ住んだのが、
アンネ・フランクの家族とその友人たちである。
中に入ると、階段の踊り場に本棚があり、これが隠れ家の入り口を隠していたが、この家はここで終わりだと
思われていたのである。
アンネの使っていた部屋に入ると、当時のドイツの大スターだった喜劇役者、ハインツ・リューマンの写真が
貼ってあるのには驚いた。それにノルマンディ地方の地図もあり、連合軍のルートが鉛筆でたどられていた。
さぞかし待ち遠しかったに違いない。
それに、昼は下のオフィスで働いている人がいるので音をたててはならないし、それでなくても、
狭い住居に他の家族も同居しいて、外に出ることもかなわない。
全ては生き延びるためなのだが、気がおかしくなりそうになるだろう。
それだけ恐怖と一緒に過ごしていた、ということなのだが。
残念なことに密告されて、全員ゲシュタポに逮捕され、戦後唯一生き残った父親のオットーがアムステルダムに戻った時、
彼らを隠匿してくれた女性が放置されていたアンネの日記を保存していた。
この「アンネの日記」が出版された当時はそれほど売れなかったらしいが、アメリカで映画化されたとたんに
爆発的に売れ、今では聖書に続く永遠のベストセラーになっていると聞く。私の訳した「チェロを弾く少女
アニタ」も映画化されれば良いのに・・・・。なーんて宣伝したりして。
アムステルダムと言えば、絶対に避けて通れないのが、ダム広場付近にある、「飾り窓」である。
大航海時代、オランダは大船団を世界中に送った海運国であるが、現在の様に気象状況も予想できず、
スピードは風まかせで南米、東南アジア、日本などを往復したら1年以上経っていたなんてのは
珍しくもなかっただろうし、かなりの危険を伴う航海だったと思う。
それだけに、にぎやかな港にたどり着いた船乗りたちは、それまでの幸運を喜び、
これからの不安を吹き飛ばすという目的で、酒と風俗営業に大騒ぎしたのだろうし、
それも家族のいない男たちの金の使い方は半端じゃなかったのかもしれない。
どこかの国も、不景気だ、不景気だ、と騒いではいるが、週刊誌などを見れば、風俗営業は
その衰えを知らないでいるらしい。
久しぶりにアムステルダムを訪れ、飾り窓の集まっている一角を歩いてみた。
もちろん、買うことはせずに、「ウインドーショッピング」だけにしておく。何と言っても不潔だし、
気持ち悪い。それに、変な病気に罹るのも嫌だし・・・・。入り口の脇にショーウインドウがあり、
その中に半裸状態の女性が座って、道行く男たちに微笑みかけている。営業中である。
このショーウインドウがカーテンで閉じられている場合は、作業中というわけである。
冷やかしに、「まけてくれよ」と交渉したら、「いいわよ」と応えられてびっくりしたりする。
初めて訪れた74年のころから比べれば、窓の女性がかなり減っているようで、多くの窓
には「部屋貸します」という張り紙が代りに貼ってある。エイズの影響で、フランクフルト
と同じ様に、買うほうが怖いんだから、売るほうはもっと怖いというわけで、女性も減っ
てしまったのだろう。
その代わりに、町を歩いているとアフリカ人が頻繁に、「コカ!」と声をかけてくる。
「コカインを買わないか?」という意味である。オランダではコカインは禁止されているが、
マリワナを吸うのは禁止されておらず、町の喫茶店で買えるらしい。
ドイツから買出しにいく人もいるらしく、アウトバーンで警察の抜き打ち検査がけっこうある。
マリワナはかなり昔にちょっと吸ったことがあるが、それほど酩酊するようなものでもない。とは言う
ものの、こういうものには近づかないほうがいいだろう。深入りしたら大変なことになる。