コンピューターの話

コンピューターを購入したのは98年だったと思う。日本と違い、ドイツではこのような
新しい物に対しては、我も我もとは飛びつかない。ファックスを購入したのは90年の
ことだったし、携帯電話も95年ごろだったはず。いずれにしろ機材も500マルクで結構
高い物だったし、携帯電話料金もかなり割高だった。それでも仕事上どうしても
必要なので購入し、今では欠かせないものになってしまった。

もっとも、携帯電話にかかってくるのは仕事の話だけなので、はっきり言えばあまり
持ちたくない。若い女の子からかかってくるわけはないし(当然だ)。

それはそうと、コンピューターの話。何しろアナログ人間なので電気のことはさっぱり
分らず、おまけにプロバイダーとか、サイトとか、ハングアップとか、やたらと横文字が
多くて何のことかさっぱり分らない。それに加えて、今の様にプロバイダーの数もさほど多く
なかったので、一番料金の安い、そして最大手のドイツテレコムに加入した。

購入した機材はドイツのウィンドウズが入ったものだったが、当然日本語は使えず、
つてをたどって、ドイツのベースに日本語のウインドウズ95を乗せてもらった。
使い始めてみると非常に面白く、朝日新聞のインターネット版、当然アダルト物なども
覗いて見たのだが、日本との連絡で電話代が非常に安くつくし、そのまま書き込めるし、
何といっても字の汚い私にとっては、ワープロ機能が付いているのは有り難かった。

問題なのは1999年から2000年に変わる時であった。果たしてコンピューターが
正しく機能するか?ということで、世界中が大騒ぎし、コンピューターが狂って、
この時間には飛行機が落ちるのではないか?という話で持ちきりだった。

ちょうどこの時、1999年12月31日の23時50分ごろにフランクフルト空港に
行ってみた。
空港のホールには誰もおらず、外に警備員が数人いるだけで、第1ターミナルと
第2ターミナルを結ぶモノレールも止まっており、バスで振り替え輸送をしていた。
さて、0時を回ったが何も起こらない。5分ほど過ぎると、どこからともなく掃除の
おばさんたちが何人か姿を見せ始めた。結局は何も起こらず、めでたしめでたし。

同時に私のコンピューターにも何も起こらず、安心していたのだが、1ヶ月ほど経った時に
突然、ウンともスンともいわなくなってしまった。スイッチを入れても起動せず、
モニターは真っ黒なまま。何をどうしていいものやらさっぱり分らない。
電気製品の悪いところである。どこがどう壊れたのかさっぱり分らない。これが機械だったら、
どこかが磨り減っているとか、割れているとか目にできるし、ある程度は動いてくれるが、
電気はゼロか100%である。どこかが一ヶ所でも壊れると全く動かなくなる。
車でも、エンコしているのはたいてい電気系統の故障である。機械的なものであれば、
どうにか動いてくれるのだが。

八方問い合わせをして、エキスパートに起動してもらうように頼んだのだが、ドジな事に
中に入れておいたデータを全て消してしまった。仕事で重要な記録から、個人的にメール
交換をしていたアドレス、その他を全て消されてしまったのである。まさにゼロか100%
である。困った。業務上のパートナーは住所、ファックス番号などを控えているので、
その旨連絡すればいいのでさほど問題はないにしろ、個人的にメール交換をしている相手は、
相手からメールが来ない限り連絡する方法がない。結局音信不通になった相手もいる。

このような便利な物は、動いている時は、これほど便利な物はないと思いながら重宝する
のだが、動かなくなると、これほど頭に来るものはない。というわけで、それ以来、重要な
物は全てプリントアウトしてバインダーに保管している。やっぱりバインダーの書類を
めくって調べた方が合っているらしい。