ドイツの日本人リムジンサービスを始めた話
ドイツで個人旅行向けの日本人リムジンサービス、ハイヤーを始めたのは1992年の5月からである。
それまでは、いわゆるドイツの団体旅行の日本人ガイド、ドイツ語通訳として、大型バスに乗った団体と同行しながらご案内、
たまには、添乗員なしの小さなグループ、あるいは個人旅行のお客様のご案内と言う業務だったが、日本からのノンストップ便が
フランクフルトをはじめとするヨーロッパの空港に乗り入れ始め、さらには、「地球の歩き方」という個人旅行向けのガイドブックが発行されて、
「これからは個人旅行が絶対に増える」、と言う予想を立てて、日本人観光客、それもご家族、友人同士などの小グループを対象とした
専用車によるリムジンサービスを始めようと思い立った。
ところが、ドイツでリムジンサービス、いわゆるハイヤーというサービス業を起こすのにはドイツ政府からの許可が要る。
その許可を申請する前提として、商工会議所の試験に合格した者、または一定期間バス会社などの支配人として勤務、
あるいは日本で言う一般旅行取扱者の資格を有する者、という規定がある。
私はこの商工会議所の試験を受けて合格しない事には申請がができない。
というわけで、この試験に合格した人の教科書などを借り受けて受験勉強に望んだ。
試験の内容は、雇用法、税法、休暇法、料金設定の計算など、タクシー、ハイヤー会社設立のための
最低知識、それに会社を設立した時の資金的な条件などを要求する4択の筆記試験と、原価計算、そして口頭試問
であったが、結果は見事不合格。
やはり講習を受けなければならないと痛感し、受験勉強のために講習に通う事にする。
受験予備校というわけである。
ちなみにこの試験はに合格すると、タクシー会社も設立できる。
タクシー会社を起こすのはいいとしても、町によってそれぞれタクシーの数は決まっており、その権利が売買されるとのこと。
早い話が、ゴルフの会員権のようなもので、結構高いようだ。ドイツには日本人タクシーはあるのかしら?
先に述べた受験内容を詳しく、そして色々な裏技や試験の落し穴を教えてもらう。
やはり学校というものは便利である。
特に、本当に勉強しよう、という者にとっては。
いつでも思う事だが、「これぐらい一生懸命高校時代に勉強していれば、医者でも教授でもなれただろうに…」
などという事を考える。
二回目の試験では、原価計算が完全にできて、筆記試験で80点以上を取った人は口頭試問が免除された。
私は原価計算ができたのだが、筆記試験で80点を取れずに、口頭試問があった。
この口頭試問では三人の試験官がおり、交互に質問が出された。
私は手形に対する試験官の質問にへんてこりんな答えをしたり、営業税、と言う言葉がすぐに出てこなかったりで、
こりゃまただめかな?という感じがした。
最後にチーフ試験官が、「結果は後日お知らせ致します。」と発言する。
「いや、この場で言って下さい。落してもらって結構です。この次には絶対に合格しますから!」
「じゃあちょっと外に出ていて下さい。皆で相談しますから。」2〜3分待たされた所へそのチーフが顔を出し、
大きな声で「オーケー!」と言ってくれた。
「有難うございます。いいクリスマスプレゼントになりました。」とお礼を言い、試験場を後にする。
90年の12月中旬の事だが、ミニバスを買ってドイツ旅行に来る日本人観光客相手のドイツでは
ショーファーサービスとも呼ばれるリムジンサービス・ハイヤーを始めたのは、その1年半後の92年5月のことである。
ちなみに、2年後にバス会社を起こす資格の講習を受け、こちらの試験は見事に口頭試問を受けることなく合格。
バス会社を興すことはできても、バスの運転免許証がないのでバスは運転できない。
それ以上に、バスは車両自体がかなり高いものだし、バスのチャーター料金が下がっているので、バス会社を興すことはもちろん、
バスの運転免許証を持つことも考えていない。
そんなことになったら、「バスの運転、ガイド、通訳もやってほしい」ということになり、かなりのパニック状態になると思う。
ローテンブルクのスライドショー