パリの話 その2

その1でも述べているように、さすが花の都と呼ばれるだけあって、この町はどこに行っても
(と言えるほど知ってはいないが)、何か新しいものを発見したり、雑然とした、上野のアメ横のような
感じの所を偶然通りかかったりすることもあり、何となくうれしくなる。

これが、私が住んでいるドイツともなると、あまりにもきちんとし過ぎているせいか、面白みに欠ける
感じがしないでもない。

これもドイツ気質というものだろう。
よく日本人とドイツ人は国民性が似ている、と言われているのだが、私はそうは思わない。

それはそれとして、旧オペラ座の近くに日本人の好きなシャネルとか、イヴ・サン・ローランなどの
いわゆるブランド品が並んでいる、

プランタンというデパートの前を偶然通りかかった。

中では当然、多くの日本人観光客が買い物をしているのを見かけたのだが、このデパートの前で
たたき売りをしているのを発見した。
やっていたのは日本で見かけるたたき売りのオジさんのような、腹巻、ダボシャツに雪駄という
井出達ではもちろんない。くごく普通の服装をした二十代の若者だった。

売っていたのはバナナではなく、ナッツ入りのチョコレートだった。膝の高さぐらいのテーブルを用意し、
その上に大きなチョコレートの箱を二つほど乗せた後で、100フラン札を手にしながら、
「はい、100フラン、100フラン、これで沢山のチョコレートが買えるよ!(別に言葉を理解したわけではない)」
と叫びながら、「これでもか、これでもか」、と言う感じで、どんどん小さな箱をお客が「買った!」と声をかけるまで
上に乗せて足して行く、というやり方が取られている。

日本のように、バナナ一房を置いて、どんどん値段を下げて行くやり方ではない。
BR> そう言えば、<煙草なども値上された時は、値段を上げる代りに中身を少なくしていくやり方が取られていたことも
あったんだっけ。

日本のやり方では、値段を下げて行くと、お終いにはただみたいな値段になってしまう、と言うこともあり、
売り手にとってはあまり賢い方法ではない、と言うことだろう。

ところが、かなりのチョコレートが山積みにされても買い手がつかないこともあり、その場合は売り手がこの山を
片付けてしまい、また最初から始めることになる。

このテーブルの上に大きな箱を置く前に、本人がピョコンとテーブルの上に飛び乗って何か大声で口上を述べる、
と言うことも行なわれ、言葉はさっぱり分からなくても結構楽しめる。

酒好きの私にはさすがにこの山積みのチョコレートを買う気にはならなかったのだが。

このような叩き売りはドイツでもたまに見かけるのだが、ハンブルクの毎週日曜日に開かれるフィッシュマルクトでは
バナナと魚の燻製のたたき売りが行なわれている。
それに関してはハンブルクの話で述べようかと思う。