ドイツメルヘン街道を個人旅行の皆様を日本人ガイドが専用車でご案内します!!
10年後の再会の話
ドイツ旅行にいらっしゃるお客様のガイドをしてから早18年、平行してドイツ個人旅行のお客様のための
日本人運転手をしてから12年以上の月日が経ってしまった。
その間、色々なお客様に出会い、時にはとんでもない理不尽な事を言うお客様もいたし、
こんなにいいお客様もいるのか、と思うほどの方たちもいらっしゃる。
その中でも最も印象に残っているお客様の話。
ドイツやスイス、オーストリアなどの個人旅行なさるお客様相手のリムジンサービスの日本人運転手を始めて
まだ2年ほどしか経っていない、93年の暮れから94年の新年にかけてフランクフルトからロマンチック街道経由、
ミュンヘンまでの行程6日間をご案内した、福岡県T市からいらしたS様ご夫婦と、お嬢様3名様の個人旅行であった。
個人旅行であるし、私自身が運転手を兼ねているため、運転手のご機嫌を伺ったり、持ち上げたりすることなく、
お客様の希望通りに食事も観光も全く自由にできるというメリットがある(完全に自己宣伝)。
それはさておき、フランクフルト空港の荷物が出てくるターンテーブルのそばでお客様を
待っていると、すらりとした女性が微笑みながら近づいて来た。「Sですが…」「お疲れ様でした。
ドライバーの藤島です。どうぞよろしく」。後ろにはご両親が落ち着いた感じでこちらに目を向けている。
「判った、判った」、と思う。第一印象で、どのような性格のお客様か何となく判る時があるが、
正にそれである。ホテルに到着してから、奥様が「打ち合わせを兼ねてコーヒーでも」、と誘って
くれたが、その際に小さな袋を渡してくれた。
打ち
合わせが終わって部屋に帰って中身を見ると、目の飛び出るような金額!
内心困ってしまう。「まだ何もしていないし、こんなに頂くんだったら、もしかしてとんでもない要求を
されるんではないか」、と思ってしまったのだが、完全に杞憂に終わってしまった。ご主人は、
奥様とお嬢様が楽しんでくれればそれで満足、という感じの非常に温厚なジェントルマン。
しっかり者という印象の奥様。そしてすらりとスマートで上品なお嬢様。「うーん,いい親子!」
ご案内した6日間、何をしても喜んでもらえるし、どんなへまをしても、怒られることもない。
こちらもとて
も案内し易いし、やりがいがある。できる限り、あちこちお連れしたのだが、とうとうミュンヘンでは
ブランド物のベルトを奥様からプレゼントされた。一度は断ったのだが、「いいから選びなさい!」、
と言われて有難く頂戴する。
さらには帰国後、お嬢様から、「少しですが」、と手紙が添えられた大きな段ボール箱一杯の、
とんこつラーメンなどの日本食が届けられた。
お礼にワインを3本こちらから送ったりして、「こういうお客様がいた」、としばらくの間ガイド仲間に
自慢していた。
2004年のクリスマスを控えた12月22日の朝、電話でたたき起こされた。
普段仕事を依頼されたことのない、オペーレーターのM社から、「12月26日から1月3日まで
空いているか?」、との伺いである。
「空いてますよ」。
「福岡の親子3名様で、藤島さんをご指名です」。
「Sさんですね。よく覚えていますし、何を置いても行きますから。ぜひともご案内させて頂きます。
Sさんによろしくお伝えください!」
こんな嬉しいことはない。
お客様が私のことを覚えていてくれて、再び指名してくれたのである。
早速お嬢様から頂いた手紙を探し出して日付を見たら、1994年1月27日であった。
なんとあれから10年も経っていたのである。その後M社とのちょっとした問題があったも
のの、
ベルリンから始まり、ドレスデン、ライプチッヒ、メルヘン街道経由でフランクフルトで終わる
個人旅行の、今回は車無しの9日間に渡るガイディングを勤めることになった。
ベルリンの空港で再会した3名様。全く変っていない。特にお嬢様は宝塚の雰囲気で、変ったのは
白髪が増えた私だけ。グヤジイ!
ご案内していても、10年前の雰囲気そのまま。
閉館していて見学できない事に不満を述べるわけでもない、与えられた情況で十二分に楽しんで
いらっしゃるので、こちらも何でもしてやろう、という気になるし、結局は3名様だけなので、
通常は行けない所にご案内してみよう、という気になってしまう(ザマミ
ロ)。
ハノーヴァーでは、スイス旅行の際に、お嬢様と個人的に仲良くなってしまった女
性ガイドが、
はるばる千キロ離れたジュネーブからお客様に再会するためにやって来た。
さもありなん。こちらも、「何を置いてもご案内させて頂きます」と思ったのだから。
奥様が食事中に、「旅行中は、遊ばせてくれればいいのですよ」、とおっしゃられていたが、
全く的を射ているし、こちらも常にそう思いながらお客様をご案内している。
お客様は、あちこち観光に行くのではなく、遊びに来ているんであって、我々ガイド、
あるいは添乗
員は、お客様を遊ばせることが最も大事なのである。若い人たちは
何をしても遊べるが、お年を召したお客様は、こちらが遊び方をアドヴァイスする、
あるいは遊ぶのを手伝う、ということをしなければならない。しかしながら、それができるだけの
時間的余裕がないのが、現在の一般募集のツアーである。
そういう意味では、S様ご家族は常に3名様のみで、しかもほとんど何も予定を組んでおらず、
全ては自分たちの思い通りに楽しむ、ということができる様になっているし、今回もそれなりに
楽しんでもらった様である。
何よりも、私自身がお客様以上に楽しませてもらった。今回は残念ながら私が自分の車でご案内
するということにはならなかったが、逆に考えれば、お客様にまたドイツに来てもらえるる余地が
あるということである(来て頂けるかしら?)。
S様親子には、「また10年後というのは勘弁してくださいね」、とお願いしておいた。
この様なお客様をご案内できて、「ガイドをしていて良かった」、とつくづく思う。
S様親子3人に対しては、この言葉しか見つからない。
「DANKE!!!」